本を渡る [物語詩]
本を渡る
読みかけのページを開くと
波しぶき
本の海から飛び出す
カモメの本を読んでいた
今日は
本を開くのをよそうと思ったが
パサパサ羽ばたく羽根の音が小さく聞こえ
しおりをはさんだページを開くと
バサバサバサ!
カモメの数が増えているではないか
本はちょうど太平洋を横断する
イルカが登場した場面で
今度はイルカが外海を泳ぎたいと
飛び出しやしないか
いつもよりハラハラ読んで面白くなってきた
ふと気づくと飛び出たカモメたちが
頭に肩に乗って本をのぞきこんでいる
突然母が部屋の扉を開けて
ぎょっとしたが
午睡の夢と思いこみ
寝室へ戻って眠りなおしていた
夕方になって変な夢を見たわと母
面白い夢だねと笑い飛ばした
部屋に戻り
イルカに見とれたカモメたちに
ーもうお帰り陽が落ちるよ
と伝えると
吸いこまれるように小さくなって
カモメはつぎつぎと夕方の
本の海辺に入って消えた
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