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フタコブラクダ [物語詩]

フタコブラクダ

フタコブラクダの
コブに挟まれ
ゆらりゆらり進む砂漠は
淋しい狭間に滑稽な光景
月が砂漠を照らし
苦しくてもお道化た
不思議な感覚

生きていくには
フタコブラクダを胸に
飼っているといい
泣き笑い滑稽を繰り返すと
ほんの少し苦みを忘れる

砂漠を進むような重い日も
フニャラユラユラ
フタコブラクダのコブに挟まれ
ゆらゆら進むその滑稽さが
柔らかい笑みに変わってゆく




※ラクダって、見たり思い出すだけで、なんかユニークで可笑しい。
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静かな羽根 [物語詩]

静かな羽根

カンパネルラのことだから
天使の羽根を広げ
神様を手伝うために
天空を巡っているのだろう

地上には
ジョバンニとザネリでいっぱいだ
安らかに過ごしてよ
空に向かって伝えても
天使の役目を羽ばたかせ
飛び続けているんだね

白い羽根のような雪が降り
地面にも届くよ
滅多に降らないこの街にも
雪が降って一面優しくなる
白い羽根雪がふんわりきれい

天上には静かなカンパネルラが
いっぱいいるんだね
地上から天空へ向けて
ふわっと笑みを飛ばした




※お正月から信じられない出来事ばかり。心のケアをするお医者さんも派遣されて、少しでも心が和らぐことを願います。
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兎たち [物語詩]

兎たち

次々に柵を越え
飛び出していった兎たちは
密かな希望だ
柔らかでか弱く見えて
白も茶色も白黒も
走り出すとアスリートのよう
草食動物の持久力は
生きるためのたまもの

月の裏側に兎たちはたくさんいて
ひっそり先を見据え
準備を怠りなく積んでいる
いざというときに
クレーターを飛び超え
未来を走り出せるように

表側で餅をつく司令塔の兎が
地球の様子を伺いながら
優しい強さを広げようと



※兎年は終わりましたが、月の裏側にいていざという時、飛び跳ねて助けに行きます。

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猫探偵 [物語詩]

猫探偵

茶房を通り過ぎる影を見て
飲みかけのミルクティーを置き
するりと行ってしまった
彼は探偵
トレンチコートに黒い山高帽
銀色のしましまが光る尻尾と
ピンと立つ繊細で透明なひげ
瞬く間に行ってしまった
猫探偵
主に猫探しを請け負う
猫のことは判るから百発百中
ただし
飼い主から逃れたい猫に会うと
逃がしてしまうのが難点
猫の心持ちが大事だなんて
探偵というより猫カウンセラー

今日も猫足を立てず
目に見えない相談
受けて立つ日々
優しき猫探偵



※にゃんにゃんにゃん2月22日猫の日。探偵ロマンス続編まだかなぁ。 *切り絵展 かみがみの森も素敵でした。なんば高島屋2月27日(月)までです。
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アカルイシ [物語詩]

チェシャ猫.jpg
アカルイシ

アカルイ石を探して
自ら光る明るい石
月光を浴びるとなおさら

赤いサファイア
青のラピスラズリ
透明ホタル石

緑色した目の猫君が近づいて
猫目石のように光る
生きる美しい原石
光る意思が隠されている

ナーニャー美しい声で鳴くと
浮遊する体温が瞬く間に上昇
明るい意志を手にしたような
ごきげんな石と猫


※2月22日は猫の日なので前もって猫の詩を。明るい詩とも読めます。
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ぷかぷか [物語詩]

カモメオブジェ.jpg
ぷかぷか

ぷかぷか
海に浮かんでいたのは
パンプキンアートだ
長雨で海に流されていた

パンプキンはくり抜かれ
丸窓がいくつか
中の空洞に飛ぶ鳥と小鳥
ぷかぷか
ゆらゆら

遠くから双眼鏡で覗くと
ヤギキツネオオカミヒグマ
ゆらゆら乗っている
どれだけ大きいのだ

おおーい
と手を振ってみる
チチチピチュピチュ
ウォーオォーンクーンメーェ
鳴き声が聞こえた
助けを待っている!
近くの灯台まで走って
救助のモールス信号を
送ってもらう
たちまち岬から救助船が現れ
パンプキンアートと動物たちは
救助された

けれど
動物たちとパンプキンが
不満げに見えたのは
このまま海の向こうを見てみたい
と思っていたの

パンプキンアートの舟は
今日も岬から
海を眺めている

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月の満ちる [物語詩]

銀の球体.jpg
月の満ちる

月満ちる音が聞こえてきた
銀鈴の音色のような
宇宙の金管楽器のような
不思議に心地よい
空耳、夜空耳、月空耳
茸の形の耳がぴくぴくと反応
無音の宇宙にこだまする想像音

月の裏側は
優しさだけではどうにもならない
溢れては流れゆく感情の成分が
隕石になって流星と化す

サクランボウのような
真っ赤な惑星があったなら
まっしぐらに見つめて
ロケット開発に漕ぎ着けたい
サクランボウなら赤々と燃える魂
太陽と銀河のブランケットにくるまり
天地も逆転の宇宙遊泳

月の裏側から見るサクランボウ星雲の
サクランボウ星を摘み取り収穫し
真っ赤な心のまま
月の満ちる音を聞き
これから始まる遥かな星へ
落ちてゆきたい




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うさぎ [物語詩]

20221124_081117.jpg
うさぎ

耳に不安をのせて
はねるうさぎ
逃げて走って
温かい場所はどこ
足跡がテンテンテン
雪の中のモールス信号
テンテントントン
雪に打ち込んでゆく

はねうさぎを
双眼鏡で見つけると
大丈夫の手旗信号を送って
この山小屋へ

ようやくたどり着いた
はねうさぎに
ぬくぬくのひだまりの
絵本を読んであげる
ひりひりを忘れ去るように
こんこんと
深い眠りに就きやすいように

あしたがぴかぴかに
過ごせるように





タグ:うさぎ
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夜の天体望遠鏡 [物語詩]

皆既月食.jpg
夜の天体望遠鏡

学校の屋上に
天体観測用のドームがあった

走って螺旋階段を駆け上がり
一気に屋上まで上ると
夜が迎えに来ていた

望遠鏡は遙かな宇宙を
夢見させてくれる

はっと気づくと
一瞬の想像に微笑むように
月が僕の思いを照らしていた




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ガラスの短編 [物語詩]

木.jpg



Glass Shorts

In the center of a high-rise building
A donut-shaped hole becomes a courtyard
There is a glass-walled break room opposite.
Reflecting everyday life

Young man buying canned coffee at a vending machine
Women sitting on chairs and talking
A gentleman with a cane on his cheek and vague thoughts
Standing at a round table and blowing a cigarette

Looking at the rest room on each floor
Glass shorts appear and disappear
If there is a speech bubble, put the words
The development of joy, sorrow, and turning around
Feel free
I can't help but think
Transparent shorts are rolling everywhere
Waiting to come back to life


ガラスの短編

高層ビルの中央に
ドーナツ状の穴が中庭となって
向かい側ガラス張りの休憩室が
日常を映し出す

自販機で缶コーヒーを買う青年
椅子に座り話しこむ女性たち
頬杖をつきぼんやり考えごとの紳士
円テーブルに立ち煙草を吹かす輩

各階の休憩室を眺めると
ガラスの短編が現れては消えてゆく
吹き出しがあれば言葉を入れて
喜怒哀楽・起承転結の展開を
自由気ままに
考えずにはいられない
透明な短編はどこでも転がって
息を吹き返すのを待っている



明日はチェコフェスティバルへ。人形劇が楽しみ。
タグ:翻訳 英語 短編
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詩集「満月に手がとどきそう」      詩集「兎の散歩者」                                  
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