SSブログ

ムーン・リヴァー [物語詩]

街灯ss.jpg
ムーン・リヴァー

店にムーン・リヴァーが流れていた
悲しくはなかったはずなのに
ひとしずくほど涙が出たいといいはった
風が一瞬砂を舞い上げ渦巻いて消えた

街路樹が灯りを点す時間だと
点灯夫に教えるのが枝仕草で伝わる
ムーン・リヴァーの曲が終わりかけたとき
ちょうどくわえ煙草の点灯夫が
赤い電灯箱のスウイッチを押したので
一斉に街路樹の灯りが点った

点灯夫が枝ぶりのいい樹に
今度一杯やろうぜと声を掛けた後
潤んだ川の流れる橋の上から
月に挨拶をして帰る姿を眺めた

昔の映画を見た後の切ない感情が甦る
古い曲に沁みついた郷愁と月と街灯は
色と悲しみが似ている


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント

詩集「満月に手がとどきそう」      詩集「兎の散歩者」                                  
このブログに掲載している詩・絵・写真の無断転用・使用を禁止いたします