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ヒョウのはく製 [物語詩]

ウインドウs.jpg
ヒョウのはく製

道に迷った
路地裏を通ると
ユキモト紳士服店があり
ユキヒョウのはく製が
生きているように飾ってあった
すると
そら、動いたではないか
行きついた先でろくな事がない
どうしてもこんな場所にはまり込んでしまう
そうか、路地裏に入ろうとするから
悲劇が起こるのだ
がもう遅い
ユキヒョウのはく製がこっちへと手まねき
やっかい事はごめんだといいながら
行かずにはいられない
向かいの扉にいる
モモタ帽子店の看板猫に
このハート型の赤い小箱を渡してくれという
はく製が本物の猫に恋するとは

モモタ帽子店に行くと
モモ猫はスリスリと足元に寄って来た
ーお向かいのユキヒョウ氏がこれを
小箱をモモ猫に渡した途端
キラリと光る眼
はっとしてふり向いた
ユキヒョウはびくとも動かず
完全なはく製になっていた

しまったぁ!
ここは動物界の国境だったのだ
獣の越えられない境界線が
引かれていると
小箱の中身は生命の種だ
まんまと運び屋にされていた
噂で聞いたことがある
ヒマラヤの青いケシ色をした
輝く生命の種は
瀕死の動物を助けるらしい
ユキヒョウは誰かを助けるために
自らを犠牲にしてはく製になったのだ

気がつくと
ユキモト紳士服店もモモタ帽子店も
遠の昔にさびれた過去の思い出

角のタイル張り交番へ行き
お巡りさんにこの事件を
伝えようかと思ったが
シッポのある黒ヒョウなら
ネコ科本部へ連れて行かれそうでやめた

タバコ屋の角を曲がるとき
遠目でふり返ると
埃をかぶったユキヒョウが
ぴくりとも動かずショーウインドウに立ち

猫はどこかへ行ってしまった


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