境界線

古ぼけた喫茶室の裏窓から
景観を眺めていた
立ち並んだビルの裏手に
少しの街路樹と
何やら不思議な霧かすむ空間

お茶を飲む猫の横顔
読書する山羊紳士
双眼鏡でこちらを覗く犬氏
思わず手を振ると
犬はぎょっとして
窓をバタンと閉じてしまった

もしかすると路の向こう側は
通路の境界を挟んで
別の世界が存在するのだろうか

路の向こうへ渡ろうとしたが
迷うばかりで
あの路までたどり着けない
境界線が見当たらない

ふと空を見上げたが
先刻窓から眺めた雲は
すでに流れ動いて
違う形に変化していた