上弦の月 [宇宙]
上弦の月
上弦の月が光の梯子を降ろし
助手の月男を夜の隙間に探らせる
上弦の三日月は揺ら揺ら
空から夜を見下ろしていたが
灰雲が水墨を流し邪魔をする
町は静かに暮らしているが
夜猫は薄暗い雲行きにニャーゴ
やがて灰雲は悪戯に飽きて
欠伸と共に去る
上弦の月は月男を呼び戻し
月光の矢を投げはじめる
枯れかけた植物に月照を浴びせ
怪我犬に光の青包帯を巻いてやる
太陽が月に反射する光はまだ強く
みずみずしい気体が湯気になり
上昇するほどだ
上弦の月は
呼吸するため息を
夜にひっそり蘇らせていた
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