幻影

言葉が音にかき消されて
よく聞こえない
列車の座席にいるのだった

“白線にご注意ください”
“右側の扉が開きます”
“列車がまいります”
聞きなれた声は

“鳴くセミにご注意ください”
“山羊皮の頁が開きます”
“ネッシーがまいります”

ただの聞き違いとは思えず
かすれて途切れた音声は
ファンタジーの扉が開いてしまっても
おかしくはない

現実の座席につかまり
何とか引き込まれずに
開いた扉から外へ

飛び出た先は海
無数の青い夜光虫が光り輝き
現実と幻、夢さえ混ざり合い
紛れ込んだ世界は

底知れない幻影へと



※最近観た映画:コクリコ坂から なんとさわやかな、なつかしい…。前半、動きの細かい丁寧さも、これからの課題であり、楽しみでもあります。