魔法使いの弟子

杖をついたひげじいさんが
電車に乗っていた
降りて階段を上がる時
すたすたすたっと軽い足取り
杖なんていらないじゃないか
呆気にとられ口を開けて見ていると
ひげじいさんは
階段を上がりきった先で振り向き
口を動かして何か言った
電車のアナウンスでよく聞こえない
口のかたちが
“ま・ほ・う”と言ったようだった

ひげじいさんの後を追っていたなら
魔法使いの弟子になれただろうか
それともひげじいさん
最後の魔法だったのかな

大年寄りまで生きて
誰でも魔法が持てるなら
生きて生き続けて見てみたい
魔法使いの弟子でなく
最後に魔法の使える日まで