境界線のあいだ

しょぼ降る雨の日
目の前を黒猫が歩いていた
振り向き振り向き
ついて来いとでもいう仕草
町を歩き住宅街を歩き
路地裏のさらに
狭い細い猫道に来た
ここを通れと?
傘をたたんでも入れやしない

ふいに
猫になった自分の姿が
垣根を跳び越え
ひらりと消えた

あの境界線を通ったなら
本物の猫になってしまうだろう
細かい雨が霧状になり
まわりがさらさら消えていく

猫になる道もありかな
行ってしまった黒猫
白い霧状の
境界線の辺りを
じっと眺める

・・・にゃーん