空耳

緑樹のトンネルをくぐり抜け
遠くから渡って来た風を受けとめる
涼やかな音色が聞こえる気がして
聞き耳をたてる木霊が見え隠れする
あれは空耳だったか?

葉っぱの青さに寄り道をしていると
耳先に新鮮な空気が触れて
散歩らしい犬と目が合う

犬とふたり
今度は並んで聞いてみた
幾ら耳を澄ましても聞こえない
それは風が流れをかえて
空が耳を傾け夏を呼んでいたから

風にオカリナを吹き
犬は空に向けて
聞き取れないほど高く
遠吠えを飛ばした