工芸館の魚 [物語詩]
工芸館の魚
工芸館の大皿に
魚の絵が泳いでいた
ぐるりぐるりぐるり魚は
端に描いてある
桃の実を見つけると
ツンツンつついてみた
すると
ふんわり桃の香りが漂ってきた
ん?何かいい匂い
見学者が気づきだし
学芸員が慌てて飛んできて
また、魚。割ってしまうよ!
本気で大皿に低くささやいた
魚は固まったと思った瞬間
しぶきをあげると
透けて隣の壺に跳ね移り
鶴と堂々向き合う柄になった
学芸員はため息をつくと
私に気づいて
内密ですよ
と片目を閉じた
道草にも
行き詰まったとき
工芸館に物語がないか
探りに行く
※東洋陶磁美術館で、思いついた作品。ひょっとしたら、物語があちこちに落ちてる?
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