土砂降りの傘 [物語詩]
土砂降りの傘
土砂降りの日
差した傘から雨漏りがしていた
おかげで傘の中でかっぱのように
頭がぬれてしまった
川の淵を歩いていると
―ヨウ!と声を掛けられた
もやの中から現れたのは
薄らぼんやりとしたかっぱの気がする
ーこんにちは
頭がぬれたまま返事をすると
かっぱらしき緑の者は
傘を持つ手をじっと見ていた
昔から指のあいだの水かきは
人よりあると思っていた
少し小降りになった雨の下
役に立たない傘をたたみ
川の淵をふたりして並んで歩く
近くだからこそ分りあう
皮膚の感覚
悲しみが似ている
世界すら似ている
気さえした
ーじゃ
ーさよなら
ぼちゃん!
かっぱは川の中へと消えていった
霧がかった川辺の町の
いつもと違う不思議も
自然と受け入れられる日がある
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